Magic WAN / Magic Transit / Magic Firewallとは?(統合解説)

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この章から第4章「ネットワークサービス」に入ります。第1章と第2章では「Webサイト」をCloudflareに載せて速く・安全にする話を、第3章では「社内のアプリと端末」をZero Trustで守る話をしてきました。この章で扱うのは、さらに土台にある「会社のネットワークそのもの」です。

その中心が、Magic Transit・Magic WAN・Magic Firewallという、いわゆる「Magic」の名を冠した3つのサービスです。いずれも企業向け(Enterprise契約)のため個人で触れる機会はほぼありませんが、「Cloudflareはネットワークごと載せ替えられる」という考え方はこのガイド全体の理解を深めてくれます。3つは常にセットで語られるので、このページで統合して解説します。

なお2026年8月時点で、このうち2つは名称が変わっています。Magic WANは「Cloudflare WAN」、Magic Firewallは「Cloudflare Network Firewall」が現在の正式名称です(Magic Transitは変更なし)。旧名称のほうが検索や解説記事では今も広く使われているため、本ページでは両方を併記します。

このページで分かること

  • これまでのページと「守る対象のレイヤー」がどう違うか
  • Magic Transit:ネットワーク全体をDDoSから守る仕組み
  • Cloudflare WAN(旧Magic WAN):MPLSに代わる拠点間接続
  • Cloudflare Network Firewall(旧Magic Firewall):クラウド型ファイアウォール
  • 3つの役割分担と、Cloudflare One(SASE)との関係

前提:これまでと「レイヤー」が違う

第1章で学んだCDNやプロキシ、第2章のWAFは、いずれもHTTP・HTTPSというWeb通信を対象にしていました。ネットワークの階層でいうとアプリケーション層(レイヤー7)の話です。オレンジ雲を有効にしたドメイン宛てのWeb通信だけがCloudflareを通り、保護されます。

一方、企業のネットワークにはWeb以外の通信もたくさん流れています。メールサーバー、VPN装置、社内システム、拠点間のやり取りなど、その多くはHTTPではなくIPパケットのレベル、つまりネットワーク層(レイヤー3)で動いています。Magic系のサービスが扱うのはこちらです。

たとえるなら、これまでのページは「店舗(Webサイト)の警備と接客」の話でした。Magic系は「街の道路網そのもの」を対象にします。どの道を通すか、危険な車両をどこで止めるか、離れた街同士をどうつなぐか。この視点の切り替えが、このページの出発点です。

3つのサービスの見取り図

3つの役割は一言ずつで整理できます。

旧名称 現在の名称(2026年8月時点) 役割
Magic Transit Magic Transit(変更なし) ネットワーク全体をDDoSから守る
Magic WAN Cloudflare WAN 拠点同士をつなぐ
Magic Firewall Cloudflare Network Firewall 通るパケットを検査する
ネットワークを丸ごとCloudflareに載せる
図1:ネットワークを丸ごとCloudflareに載せる

共通しているのは、従来なら自社のデータセンターに置いていた機材(DDoS対策装置・専用線・ファイアウォール)の仕事を、Cloudflareの世界規模ネットワークに肩代わりさせるという発想です。以下、1つずつ見ていきます。

Magic Transit:ネットワーク全体をDDoSから守る

第2章のDDoS対策のページで学んだ保護は、オレンジ雲を通るWeb通信が対象でした。しかし自社でIPアドレス範囲を保有する企業では、Webサーバー以外にもメール・VPN・独自プロトコルのサーバーなどが同じネットワークに並んでおり、これらへの攻撃はオレンジ雲では守れません。

Magic Transitは、この「ネットワーク全体」をDDoSから守るサービスです。仕組みの流れは次のとおりです。

  1. 経路の広報:企業が保有するIPアドレス範囲を、Cloudflareが世界中のデータセンターからBGP(インターネットの経路交換プロトコル)で広報します。すると、そのIPアドレス宛ての通信はすべて、送信元から見て最寄りのCloudflare拠点に流れ込むようになります(第1章で学んだAnycastの応用です)
  2. 攻撃の吸収:届いたパケットをCloudflareの端で検査し、DDoS攻撃を吸収・遮断します。攻撃が発生源の近くで分散処理されるため、自社回線に到達する前に無力化できます
  3. 正常な通信だけ届ける:残った正常なトラフィックを、GREまたはIPsecのトンネル、あるいは専用接続(Cloudflare Network Interconnect)で企業のネットワークへ届けます

導入形態には、インターネットから入ってくる通信だけを守るingress(イングレス)構成と、出ていく通信もCloudflare経由にするingress+egress構成があります。また、自社のIPアドレス範囲(経路広報できる単位のブロック)を保有していることが前提のサービスなので、対象は中規模以上の企業や通信事業者、ゲーム会社などが中心です。

Cloudflare WAN(旧Magic WAN):拠点をつなぐ

WAN(Wide Area Network)とは、本社・支社・データセンターなど離れた拠点同士を結ぶネットワークのことです。従来の企業WANは、通信事業者のMPLSという専用線サービスを契約するか、拠点間にVPN装置を並べて相互接続するのが定番でした。前者は高価で開通に時間がかかり、後者は拠点が増えるほど設定が複雑化します。しかも多くの構成では、地方拠点の通信がいったん本社(ハブ)を経由するため、クラウド全盛の現在では遠回りが増える一方です。

Cloudflare WANは、この拠点間接続をCloudflareのネットワークに置き換えるサービスです。各拠点は最寄りのCloudflareデータセンターへトンネルを張るだけでよく、拠点同士の通信はCloudflareの内部網が最短経路で運びます。接続方法(オンランプと呼びます)は複数用意されています。

  • AnycastのGRE / IPsecトンネル:既存のルーターから張る基本の方法
  • Cloudflare One Appliance:拠点に置くだけで自動接続する小型機器(旧称Magic WAN Connector。2026年1月にダッシュボード上の名称が「Appliances」に変わりました)
  • Cloudflare Network Interconnect:データセンターとの物理・仮想の直接接続
  • WARP:第3章で学んだ端末用クライアント。社外で働く個人の端末も同じ網に参加できます

重要なのは、こうして全拠点・全端末の通信がCloudflareを通ることで、第3章で学んだGatewayのフィルタリングやZero Trustのポリシーを一箇所で適用できるようになる点です。Cloudflare Oneのページで紹介したSASEという考え方の、「ネットワーク側の部品」がこのCloudflare WANです。

Cloudflare Network Firewall(旧Magic Firewall):パケットを検査する

3つ目は、ネットワークを通るパケットをルールで検査するファイアウォールです。従来は各拠点の出入口にファイアウォール機器を設置し、1台ずつルールを管理していました。Cloudflare Network Firewallはこれをクラウド側に移した、FWaaS(Firewall as a Service)と呼ばれる形態です。

  • Magic TransitまたはCloudflare WANを契約すると、標準機能として付いてきます
  • プロトコル・ポート番号・IPアドレス・パケット長などの条件でフィルタルールを書けます
  • ルールはCloudflareの全データセンターに1分未満で反映されます。世界中の拠点に同じルールが一斉適用されるため、機器ごとの設定ズレが起きません
  • 上位のアドバンス機能では、カスタムIPリスト・脅威インテリジェンスリスト(ボットネットやマルウェアの既知の発信元)・国別ブロック・ASN単位のフィルタ・パケットキャプチャ・IDS(侵入検知)などが追加できます

第2章で学んだWAFが「HTTPの中身」を見るのに対し、こちらは「IPパケットの属性」を見る、より低いレイヤーの防御です。名前は似ていますが守備範囲が異なり、企業では両方を併用します。

どのプランで使えるか

3つともEnterprise契約専用です(2026年8月時点)。Free・Pro・Businessプランのダッシュボードには登場せず、料金も個別見積もりです。このガイドで扱ってきたサービスの中では、もっとも「大企業向け」に寄った領域といえます。

個人や小規模チームが同じ発想を無料で体験するなら、第3章の組み合わせが事実上の縮小版になります。Cloudflare Tunnelでサーバーをつなぎ、WARPで端末をつなぎ、Gatewayでフィルタする構成は、「ネットワークをCloudflareに寄せる」という同じ思想を無料枠で実現したものです。

初心者が注意するポイント

  • 新旧の名称が混在しています:検索するとMagic WAN・Magic Firewallの旧名称の記事が多数見つかります。現在の正式名称はCloudflare WANとCloudflare Network Firewallで、ダッシュボードのメニューも2026年1月に製品名ベースから機能ベース(Routes・Connectorsなど)へ再編されました。古い記事の画面写真とは配置が異なる場合があります
  • WAF・CDNとはレイヤーが違います:WAFはHTTPの中身を見るレイヤー7、Network FirewallはIPパケットを見るレイヤー3の防御です。「どちらかがあれば十分」という関係ではありません
  • オレンジ雲とは別の仕組みです:第1章のプロキシはドメイン単位・Web通信だけの話でした。Magic系はIPアドレス範囲ごとネットワークを預ける仕組みで、導入の規模感がまったく異なります
  • 個人サイト運営には出番がありません:このページは「読んで概念を知る」で十分です。企業のネットワーク担当になったとき、あるいはSASEやSD-WANという言葉に出会ったときに思い出してください

関連サービス

  • DDoS Protection:Web向けのDDoS対策。Magic Transitはこれのネットワーク全体版(第2章)
  • Cloudflare One:Zero Trust製品群の全体像。Cloudflare WANはそのネットワーク側の部品(第3章)
  • Cloudflare Gateway / WARP:Cloudflare WANの上で働く出口の検査と端末側の接続(第3章)
  • Spectrum:Webサイト単位でTCP/UDPアプリを保護するサービス。Magic Transitより小さい単位で使えます(次ページ)

まとめ

  • Magic系3サービスは、企業ネットワークの機材の仕事をCloudflareの世界規模ネットワークへ移すEnterprise向けサービス群
  • Magic Transitは、BGPとAnycastで自社IPアドレス範囲宛ての通信をCloudflareに引き込み、ネットワーク全体をDDoSから守る
  • Cloudflare WAN(旧Magic WAN)は、MPLSやVPN装置に代わって拠点間をCloudflare経由で接続し、Zero Trustポリシーの一元適用を可能にする
  • Cloudflare Network Firewall(旧Magic Firewall)は、パケットをルールで検査するクラウド型ファイアウォール。TransitまたはWANに標準付属
  • 個人・小規模ではTunnel+WARP+Gatewayが同じ思想の縮小版になる

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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。

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