10秒でいうと
毎回言うことは、書いて置いておきます。
判断の基準は指示書に、手順はスキルに、役の設定はエージェントの定義に。置き場所で使い分けます。
第3章の締めくくりです。ここまでで、任せる範囲を決め(No.19)、道具を渡し(No.20)、範囲を区切り(No.21)、役を分け(No.22、No.23)、机を設計しました(No.24)。
残っているのは、それを毎回やらずに済ませる方法です。
3つの置き場所
長く使う指示には、書き分けの基準があります。
| 置き場所 | 書くもの | 例 |
|---|---|---|
| 指示書 | いつも守ってほしい判断の基準 | 「金額は数値のみ。単位は入れない」 |
| スキル | 決まった手順 | 「見積を一覧表にする手順」 |
| エージェントの定義 | 役ごとの設定 | 「検算担当は読むだけ」 |
判断の基準か、手順か、役の設定か。この3つで分けると、迷いにくくなります。
見積書の仕事で書き分けると、こうです。
- 指示書:単価は数値のみ、納期はYYYY-MM-DD、読めない項目は空欄にして報告する
- スキル:フォルダを読む → 抜き出す → 表にする → 検算する、という手順
- エージェントの定義:検算担当は読む道具だけ、指摘のみで直さない
指示書に何を書くか
いちばん使うのが指示書です。書くとよいもの。
- 判断の基準(迷ったときどちらを選ぶか)
- やってほしくないこと(勝手にやられて困ること)
- 用語の定義(社内の言い方、訳語)
- 出力の形式(毎回同じ形にしたいもの)
書かないほうがよいもの。
- その日の依頼内容(会話で言えばよい)
- 1回きりの資料(添付すればよい)
- 説明のための文章(読ませるためのコストが毎回かかる)
最後が見落とされがちです。指示書は毎回読み込まれます。No.24の話がそのまま効いていて、長い指示書は、それ自体が机を圧迫します。
育ちすぎたときの畳み方
指示書は放っておくと太ります。何か失敗するたびに1行足していくと、半年で読む気の起きない文書になります。
畳むときの目安を3つ。
同じことを2箇所で言っていないか。増築を繰り返すと、必ず重複が出ます。
もう起きない失敗の対策が残っていないか。ツールの仕様が変わって不要になったのに、残っている行があります。
注意する、で終わっている行はないか。これがいちばん多い。人の注意力に頼る行は、実際には守られません。No.21で書いたのと同じで、そもそもできないようにするか、機械が検査する形に変えられないか考えてください。
本ガイドの制作でも同じことが起きました。ある書式のルールを同じ日に3回破ったので、指示書に強く書き直すのをやめて、投稿前の検査プログラムに組み込みました。2回破ったら、それは注意力の問題ではなく仕組みの問題です。
いきなり作らない
最後に順番の話を。指示書を先に作ろうとしないでください。
正しい順番はこうです。
- まず会話でやってみる
- 同じことを2回言ったら、メモしておく
- 3回目で、メモを指示書に移す
実際に困ってから書く。先に完璧な指示書を作ろうとすると、使われない行ばかりが並びます。No.11で「一度で完璧を狙わない」と書いたのと同じことが、指示書にも当てはまります。
やってみよう:繰り返しを指示書の草案にする(5分)
プロンプト
これまでのやりとりで、私が繰り返し伝えた指示を抜き出してください。
それぞれを「判断の基準」「手順」「役の設定」のどれかに分類し、
分類した理由も添えてください。
そのうえで、「判断の基準」だけを指示書の形にまとめてください。期待される結果:3分類された一覧と、判断の基準だけを抜き出した草案が返る。
うまくいかないとき:草案が長くなったら、「外したときに実際に困る行」だけを残してください。困らない行は、そもそも要らなかった行です。
つまずきポイント
指示書に説明を書く。「なぜこうするか」を長く書くと、毎回それを読むコストがかかります。理由は1行に留めるか、別の場所へ。
全部を1つの指示書に入れる。仕事が違えば基準も違います。プロジェクトごとに分けるほうが、結局は短く保てます。
書いたら守られると思ってしまう。長い指示書ほど、後ろのほうが効きにくくなります。本当に守ってほしいことは、数を絞ってください。
このあとどこへ進むか
第3章はここまでです。エージェントの考え方が一通りそろいました。ここから先は、実際に動かす章に入ります。
- 開発ルート → 第5章 Claude Codeとは何か(No.34)
- 創作ルート → 第10章 文章とアイデア(No.72)
見積書の仕事の続きは、第4章(Cowork)でファイルに直接触れる形になります。実務ルートの方はそちらへ。
まとめ
- 置き場所は3つ。判断の基準は指示書、手順はスキル、役の設定はエージェントの定義
- 指示書は毎回読み込まれる。長いほど机を圧迫する
- 注意する、で終わる行は守られない。仕組みに変えられないか考える
- いきなり作らない。同じことを3回言ってから書く
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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。