前のページ「DNSとは?名前解決の仕組みとレコードの基礎」では、ドメイン名からIPアドレスを調べる仕組みを学びました。では、その「kaylog.io」というドメイン名そのものは、どこから来たのでしょうか。誰が発行し、誰が台帳を管理していて、手に入れるには何をすればよいのでしょうか。
Cloudflareのサービスの多くは、自分のドメイン(独自ドメイン)を持っていることが前提になります。DNSの設定も、この後学ぶCDNもセキュリティも、すべて「自分のドメインに対して」行うものだからです。このページでは、ドメインの構造・管理体制・取得から失効までの一生を整理し、Cloudflareでドメインを維持する方法まで見ていきます。
このページで分かること
- ドメイン名の構造(TLD・セカンドレベルドメイン・サブドメイン)
- ドメインを管理している組織(レジストリ・レジストラ・レジストラント)
- 取得から更新・失効までのライフサイクル
- 登録者情報(WHOIS)とプライバシー保護の仕組み
- Cloudflare Registrarの特徴と、利用するときの注意点
ドメインとは
ドメインは「買う」ものではなく「借りる」もの
ドメインとは、「kaylog.io」のようなインターネット上の名前を、世界で自分だけが使えるように登録したものです。日常的には「ドメインを買う」と言いますが、正確には所有権を買い取るのではなく、利用する権利を年単位で登録し、毎年更新して維持する仕組みです。更新をやめれば権利は失われ、いずれ他の誰かが取得できるようになります。この「更新制である」という事実は、後で説明するトラブルの多くに関わる重要なポイントです。
ドメイン名の構造
前のページで見たとおり、ドメイン名はドットで区切られた階層構造になっています。「www.kaylog.io」を右から順に分解すると、次のようになります。
- トップレベルドメイン(TLD):いちばん右の「io」。ドメインの分類にあたる部分で、ここが世界的な管理の単位になります
- セカンドレベルドメイン:TLDのすぐ左の「kaylog」。ここが自分で選んで登録する部分で、同じTLDの中に同じ名前は2つ存在できません
- サブドメイン:さらに左の「www」など。登録したドメインの下に、登録者が自由に作れる名前です
お金を払って登録するのは「kaylog.io」の部分(登録ドメイン。ルートドメインやapexドメインとも呼びます)だけです。「www.kaylog.io」や「blog.kaylog.io」のようなサブドメインは、前のページで学んだDNSレコードを追加するだけで、費用なしでいくつでも作れます。
TLDの種類
TLDには大きく分けて2つの系統があります。
- 分野別トップレベルドメイン(gTLD):「.com」「.net」「.org」など、国に関係なく使えるTLDです。近年は「.dev」「.app」「.shop」「.xyz」など数多くの新しいgTLDが増えました
- 国別コードトップレベルドメイン(ccTLD):「.jp」(日本)や「.uk」(英国)のように、国・地域に割り当てられたTLDです。「.io」(英領インド洋地域)や「.ai」(アンギラ)のように、本来は国別コードなのに、綴りの意味合いからIT系サービスで世界的に人気になった例もあります
日本の「.jp」には、誰でも取得できる汎用JPドメイン(例:kaylog.jp)のほかに、登記のある企業だけが1組織1つ取得できる「co.jp」のような属性型JPドメインがあります。取得条件が厳しいぶん「co.jpのサイト=実在する企業」という信頼の証になっており、企業サイトで広く使われています。
どのTLDを選ぶかによって、価格も、取得の条件も、更新のルールも変わります。TLDは単なる「見た目の違い」ではなく、契約先の違いなのです。その理由を次で説明します。
ドメインは誰が管理しているのか
レジストリ・レジストラ・レジストラント
ドメインの管理には、役割の異なる三者が登場します。名前が似ていて紛らわしいので、ここで整理しておきましょう。

- レジストリ:TLDごとに1つ存在する、台帳(データベース)の管理者です。「.com」はVerisign社、「.jp」は日本のJPRS(日本レジストリサービス)がレジストリです。そのTLDに登録された全ドメインの正式な記録を一手に保管します
- レジストラ:登録の窓口となる事業者です。利用者からの申し込みを受け付け、レジストリの台帳に登録する手続きを代行します。お名前.comやムームードメインといった国内のドメイン取得サービス、そして後述するCloudflare Registrarは、いずれもレジストラ(またはその販売代理店)です
- レジストラント:ドメインの登録者、つまりあなたです
ドメインを取得するとき、あなた(レジストラント)はレジストラに申し込み、レジストラがレジストリの台帳に登録する、という流れで手続きが進みます。台帳の本体はレジストリにあり、レジストラはあくまで窓口です。だからこそ、同じ「.com」ドメインをどのレジストラで取得しても中身は同等で、後からレジストラだけを乗り換えること(移管)もできるのです。
全体を調整するICANN
gTLD全体のルールを調整しているのが、ICANN(アイキャン)という非営利組織です。レジストリ・レジストラの認定や、後述する移管ルールの策定を担っています。gTLDの登録料に少額のICANN手数料が上乗せされるのは、この運営費にあてられるためです。なお、ccTLDのルールは各国・地域の組織が定めており、「.jp」のルールはJPRSが管理しています。
取得から管理までの流れ
取得の手順
ドメインの取得自体はシンプルで、次の3ステップです。
- レジストラ(取得サービス)のサイトで、希望の名前を検索して空きを確認する
- 空いていれば、登録者情報(氏名・住所・メールアドレスなど)を入力して申し込む
- 料金を支払うと、多くの場合は数分で登録が完了し、DNSの設定に進める
先に取得した者が優先される早い者勝ちの世界なので、希望の名前が既に取られていることは珍しくありません。その場合は別のTLDを試すか、名前の方を工夫することになります。なお、一部のTLDや属性型JPドメインでは、登記情報など追加の条件・書類が必要です。
更新とライフサイクル
取得後のドメインには、契約更新を軸にした一生があります。うっかり更新を忘れたとき何が起きるかは、サイト運営者が最も知っておくべき知識のひとつです。

- 利用中:毎年(または複数年分まとめて)更新料を払って維持します
- 更新猶予期間:有効期限を過ぎても、多くのレジストラでは一定期間は通常料金で更新できます。ただしこの間、サイトやメールは止まることがあります
- 償還期間:猶予期間も過ぎると、復旧手数料(通常の更新料よりかなり割高)を払えば取り戻せる期間に入ります。gTLDでは約30日です
- 削除保留:約5日間の削除処理期間で、ここに入るともう誰にも取り戻せません
- 削除・開放:台帳から削除され、再び誰でも取得できる状態に戻ります
期間の長さはTLDとレジストラによって異なりますが、「期限切れに気づくのが早いほど、安く簡単に戻せる」という構造はどこでも共通です。逆に完全に手放されたドメインは第三者が取得できるため、期限切れで失ったドメインを他人に取得され、買い戻しに高額を要求されたり、偽サイトに使われたりする事例が実際に起きています。
移管:レジストラの引っ越し
登録したドメインは、後から別のレジストラに移すことができます。これを移管(トランスファー)と呼びます。台帳(レジストリ)上の登録はそのままで、窓口だけが変わるイメージです。移管しても、ドメイン名やWebサイトが変わることはありません。
移管にはICANNの共通ルールがあり、代表的なものが「60日ルール」です。登録から60日以内、前回の移管から60日以内、登録者の氏名・組織名・メールアドレスを変更してから60日以内は、移管できません。取得したばかりのドメインをすぐ他社へ移せないのは、このルールのためです。
登録者情報(WHOIS)とプライバシー
ドメインの登録時には、正確な登録者情報を届け出る義務があります。この情報は長らく、WHOIS(フーイズ)と呼ばれる仕組みで誰でも検索・閲覧できました。個人の氏名や住所が世界に公開されてしまうため、レジストラが代わりに自社の情報を載せる「公開代行」サービスが広く使われてきました。
現在は、プライバシー保護の潮流を受けて状況が変わっています。gTLDでは個人情報の大部分が既定で非公開化され、検索の仕組み自体も、WHOISから後継のRDAPという方式へ移行しました(2025年にgTLDでのWHOIS提供義務が終了)。とはいえ「登録情報を正確に保つ義務」は変わっていません。特に登録メールアドレスは、更新通知や移管の確認が届く生命線なので、確実に受信できるアドレスを登録してください。
CloudflareではどうRegistrarを使うか
原価そのままの手数料ゼロ
Cloudflareはレジストラ事業も行っており、Cloudflare Registrarと呼ばれます。最大の特徴は、レジストリに支払う原価とICANN手数料だけの「原価販売」で、利益を一切上乗せしないことです。たとえば「.com」なら、レジストリ料金10.26ドル+ICANN手数料0.18ドル=年10.44ドル(2026年8月時点)で、初年度割引も、2年目からの値上げもありません。
多くのドメイン取得サービスは「初年度1円」のような割引で集客し、2年目以降の更新料や公開代行などのオプションで収益を得ています。Cloudflare Registrarには、この「更新時に思ったより高い」が構造的に存在しません。登録者情報の非公開化も無料で既定有効、DNSSEC(前のページで説明した応答の改ざん防止)もワンクリックで有効化できます。対応TLDは「.com」「.io」「.dev」「.ai」など400種類以上です。
利用の条件と注意点
良いことずくめに見えますが、条件と注意点があります。
- 「.jp」は未対応(2026年8月時点):「.jp」やco.jpなどのJPドメインは、Cloudflare Registrarでは取得・移管できません。JPドメインは国内のレジストラで取得・維持することになります
- CloudflareのDNS利用が前提:既存ドメインを移管するには、先にそのドメインをCloudflareに追加し、ネームサーバーをCloudflareに向けて有効化しておく必要があります(無料プランで構いません)。Cloudflare Registrarは単体のドメイン取得サービスではなく、「Cloudflareで使うドメインの維持費を原価にできるサービス」と捉えるのが正確です
- 支払いはドル建て:料金は米ドルでのカード決済です。為替レートによって円換算額は変動します
- 60日ルールの対象:取得・移管したての他社ドメインは、60日経過するまで移管できません
レジストラを変えなくてもCloudflareは使える
ここで大事な整理をしておきます。Cloudflareを使うために、Cloudflare Registrarへの移管は必須ではありません。前のページで学んだとおり、Cloudflareの導入に必要なのはネームサーバーの変更だけです。お名前.comで取得した「.jp」ドメインのままでも、ネームサーバーをCloudflareに向ければ、DNSもCDNもセキュリティもすべて使えます。
つまり「どこでドメインを維持するか」(レジストラ)と「どこでDNSを運用するか」(権威DNS)は別の選択です。Cloudflare Registrarは、対応TLDのドメインについて前者のコストを最小化できる選択肢、という位置づけになります。
具体例:ブログ用のドメインを取得する
個人ブログを始めるためにドメインを取る場合を考えてみます。
- 名前とTLDを決める:長く使う名前なので、短く・覚えやすく・綴りを口頭で伝えやすいものにします。個人サイトなら「.com」「.net」「.blog」あたりが定番で、費用は年1,000円〜2,000円程度が目安です。日本向けであることを示したければ「.jp」(年3,000円程度〜)も選択肢です
- 取得する:国内レジストラまたはCloudflare Registrar(対応TLDの場合)で登録します。合わせて自動更新を必ず有効にします
- Cloudflareに追加する:ドメインをCloudflareに登録し、ネームサーバーを切り替えます。以降のDNS管理はCloudflareのダッシュボードで行います
なお、本ガイドの後半には、この続きとしてWordPressサイトをCloudflareに接続する実践ページを用意しています。
初心者が注意するポイント
- 最大の事故は更新忘れ:ドメインを失うと、サイトもメールも同時に止まります。自動更新を有効にし、支払いに使うクレジットカードの有効期限にも注意してください(カード失効による自動更新の失敗が典型例です)
- 登録メールアドレスは生命線:更新通知や移管確認が届くアドレスです。取得したドメイン自身のメールアドレスを登録先にすると、ドメインが止まったとき通知も届かなくなるため避けましょう
- 名前は商標にも注意:他社の社名・サービス名を含むドメインは、商標権の問題で失うリスクがあります
- 移管の60日ルールを覚えておく:取得直後・情報変更直後は移管できません。移管を予定しているなら、登録者情報の変更は計画的に
- 値上げはあり得る:原価販売のCloudflare Registrarでも、レジストリ自体が卸値を改定すれば価格は変わります。「.com」も近年は毎年少しずつ値上がりしています
関連サービス
- Cloudflare Registrar:本ページで説明した、原価でドメインを取得・維持できるレジストラサービス
- Cloudflare DNS(権威DNS):ドメインのレコードを管理するサービス。詳しくは前のページ「DNSとは?」を参照してください
- Email Routing:取得したドメインで「info@自分のドメイン」のようなメールアドレスを作り、普段のメールに転送できる無料サービス。後のチャプターで解説します
まとめ
- ドメインは買い切りではなく、年単位で登録・更新して維持する権利
- 登録するのはセカンドレベルドメインまでで、サブドメインは自由に無料で作れる
- 台帳を管理するレジストリ、窓口のレジストラ、登録者のレジストラントという三者で運営されている
- 失効には猶予期間→償還期間→削除という段階があり、気づくのが早いほど傷は浅い
- Cloudflare Registrarは原価販売・非公開化無料が特徴。ただし「.jp」は未対応で、CloudflareのDNS利用が前提
- レジストラを変えなくても、ネームサーバーの変更だけでCloudflareは使える
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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。