10秒でいうと
学習に使われるかは、プランと設定で変わります。思い込みで判断しないでください。
そして、渡してよいかは学習の話だけでは決まりません。渡した時点で範囲が広がります。
ここまで各ページで「渡す前に確認してください」と書いてきました。その確認の中身がこのページです。
学習に使われるかは、環境で変わる
まず、公式に書かれていることを整理します。プランによって扱いが違うので、自分の環境を確認してください。
個人向けプラン(Free・Pro・Max)。公式ドキュメントによれば、既定では学習に使われません。使われるのは次の場合です。
- 自分で明示的に許可したとき(プライバシー設定)
- 安全性の確認が必要と判断されたとき(問題があると検出された会話が分析されることがあります)
- テスター向けの特別なプログラムに参加したとき
また、シークレットの会話は、許可していても学習には使われません。
評価(親指の上下)のデータは別扱いで、最長5年保存され、利用者IDと切り離されてから使われるとされています。
Team プラン。料金ページに、内容がモデルの学習に使われないことが機能として明記されています。
Enterprise プラン。データの保持期間を独自に設定できます。設定しない場合は無期限に保持され、最短で30日から設定できるとされています。
いちばん確実なのは、自分のプライバシー設定を実際に開いて見ることです。このページの記述を根拠にしないでください。
学習の話は、判断の一部でしかない
ここが最も誤解されるところです。
学習に使われないから安全。これは誤りです。
渡した時点で、次のことが起きます。
- 会話履歴に残ります。画面を人に見せる場面があるなら、そこに出ます(No.05)
- メモリに保存されることがあります。別の会話でも顔を出します(No.16)
- 保持期間のあいだ、サービス側に存在します
- 社内の規程に触れる可能性があります
顧客情報を渡してよいかは、学習の設定とは別の問題です。取引先との契約で情報の取り扱いが決まっていることもあります。
渡す前の線引き

そのまま渡してよいもの。
- 公開されている資料
- 自分が書いた文章
- 個人が特定できない形にしたデータ
- 一般的な調べもの
渡す前に確認するもの。
- 顧客・取引先の情報
- 認証情報(鍵、パスワード、トークン)
- 財務書類・給与
- 健康や人事の記録
第4章No.27で書いたとおり、公式の安全ガイドは財務書類・認証情報・個人記録へのアクセスを与えないように明記しています。
渡さずに済む形を先に考える
実務でいちばん効くのは、この発想の転換です。
渡してよいかを考える前に、渡さずに済まないかを考える。
- 顧客名をA社、B社に置き換える
- 金額を丸める、あるいは比率にする
- 必要な列だけ抜き出したコピーを作る
- 個人が特定できる列を落とす
匿名化してから渡せば、判断そのものが要らなくなります。第8章No.57、No.59、第9章No.68で繰り返し書いてきた形です。
社内ルールを作る
チームで使うなら、個人の判断に任せないでください。決めるべきは3つです。
1. 何を渡してよいか。情報の区分ごとに、可・要確認・不可の3段階で。
2. どこで使ってよいか。個人のアカウントか、会社のアカウントか。第4章No.27の作業専用フォルダの考え方も含めて。
3. 事故が起きたときにどうするか。誰に報告するか、何を止めるか。
3つ目が抜けたまま広がるのが、いちばん危ない形です。詳しい進め方はNo.82にあります。
社内でAIを使うルールの草案を作ってください。
・情報の区分ごとに「渡してよい/要確認/渡さない」の3段階で
・判断に迷う典型的な場面を5つと、その場合の考え方
・事故が起きたときの手順
私の会社の状況:(業種、規模、扱う情報)
法令や規格の名前を挙げないでください。最終的には法務と情報システムに確認します。
法令名を挙げさせないのは、第8章No.62と同じ理由です。
契約書・給与・顧客情報について
第8章のNo.62(契約)とNo.63(経理)から、この判断はここに集約しています。
結論を書きます。これらは「渡す前に確認する」側です。
確認先は、社内の規程、情報システム部門、そして取引先との契約。確認できないなら渡さないでください。
そして、渡さずに済む形を先に検討してください。契約書なら、当事者名と金額を伏せた状態でも論点の洗い出しはできます。
やってみよう:渡さずに済む形を考える(5分)
渡すのをためらっている資料を1つ思い浮かべてください。実際には渡さないでください。
プロンプト
“`
(資料の種類)をAIに渡して(やりたいこと)をしたいのですが、
機微な情報が含まれています。・渡さずに済ませる方法を3つ挙げてください
・それぞれで、できなくなることも書いてください
・どうしても渡す必要がある部分があれば、それも指摘してください資料そのものはまだ渡しません。
“`期待される結果:匿名化、抜粋、置換などの案が返る。「できなくなること」を見ると、そもそも必要なかった部分が分かります。
うまくいかないとき:資料の種類をもう少し具体的に書いてください。何の情報が機微なのかが分かると、案が具体的になります。
つまずきポイント
学習に使われないから安全だと思う。判断の一部でしかありません。
このページの記述を根拠にする。自分の設定を実際に開いて確認してください。
渡してから考える。取り消せません。
個人の判断に任せる。チームで使うならルールを決めてください。
関連ページ
- No.05 AIは何を覚えていて、何を覚えていないのか — 会話履歴とメモリ
- No.27 導入とフォルダ権限の設計 — 触れる範囲の設計
- No.62 契約と法務の下ごしらえ/No.63 経理・税務 — 判断はここへ
- No.82 チーム・企業で導入する — 社内展開
まとめ
- 学習に使われるかはプランと設定で変わる。自分の設定を開いて確認する
- 学習の話は判断の一部。履歴、メモリ、保持期間、社内規程も関わる
- 渡してよいかの前に、渡さずに済まないかを考える
- チームでは個人の判断に任せず、ルールを決める
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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。