Cloudflareプランの選び方(無料版でどこまでできるか)

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最終章となる第9章では、視点を「作る」から「運用する」に移します。その最初のテーマがお金の話です。

第1章のCloudflareの料金プラン入門では、料金の構造――プラン・アドオン・従量課金の3階建て――を地図として示しました。ただしあの時点では、WAFもWorkersもR2もまだ登場していません。地図はあっても、どこに何があるかを知らない状態でした。

ここまでの8章で、その中身をひととおり見終えました。同じ料金の話を、今度は「自分の場合はどれを選ぶべきか」という判断の問題として扱います。

結論を先に言えば、多くの読者にとっての答えは「当面はすべて無料で足りる」です。ただし、それがどこまで成り立つのかを知らないまま使っていると、必要な時に上げる判断ができず、逆に不要な支出をしてしまうこともあります。境界線を具体的に見ていきましょう。

このページで分かること

  • Cloudflareの課金が3つの別勘定に分かれていること
  • 無料でどこまでできるのかを、用途別に具体的に判断する材料
  • Pro・Business・Workers有料プランへ上げるべき条件
  • プランを上げても解決しないこと
  • 気づかないうちに費用が膨らむパターンと、その予防策

まず「3つの別勘定」を分けて考える

プラン選びで混乱する最大の原因は、Cloudflareの請求が1本ではないことにあります。

Cloudflareの3つの課金
図1:Cloudflareの3つの課金
勘定 課金の単位 対象
ゾーンプラン ドメイン(ゾーン)ごとの月額 CDN・DNS・SSL・WAF・キャッシュなどWebサイトの保護と配信
Zero Trust ユーザー数ごとの月額 Access・Gateway・Tunnel・WARPなど社内向けのアクセス制御
開発者向けプラットフォーム 使った分だけの従量課金 Workers・R2・KV・D1・Workers AIなどアプリの実行環境

この3つは互いに独立しています。 ゾーンをProプランにしてもWorkersの無料枠は増えませんし、Workers有料プラン(月5ドル)を契約してもWAFのルール数は増えません。

「Cloudflareを有料にしたい」という考え方ではなく、「どの勘定の、どの上限に困っているのか」を特定する。これがプラン選びの出発点です。

無料でどこまでできるのか

全体像

2026年8月時点の主要な無料枠をまとめます。

サービス 無料枠
CDNの転送量 無制限(転送量課金なし)
DDoS対策 無制限(攻撃規模による追加課金なし)
権威DNS 無制限・DNSSEC対応
SSL証明書(Universal SSL) 無料・自動更新
WAF カスタムルール5個+無料版マネージドルール
Rate Limiting ルール1個
Turnstile 認証回数無制限・ウィジェット20個
Zero Trust(Access/Gateway/Tunnel/WARP) 50ユーザーまで無料
Workers 1日10万リクエスト・CPU 10ミリ秒/回
静的アセット配信(Pages含む) リクエスト・転送量とも無制限。ビルド月500回
R2 保存10GB・Class A操作100万回/月・Class B操作1,000万回/月。エグレス無料
KV 保存1GB・読み取り10万回/日・書き込み1,000回/日
D1 保存5GB・読み取り500万行/日
Workers AI 1日10,000 Neuron
AI Search オープンベータのため無料(Workers AI・AI Gateway分は課金)
Email Routing 無料(転送先200件・ルール200件)

改めて並べると、他社なら課金対象になる部分こそ無料であることが分かります。転送量・攻撃規模・認証回数――どれも「増えると怖い」項目ですが、Cloudflareではここが青天井の無料です。

用途別の判断

個人ブログ・コーポレートサイト
Freeで完結します。CDN・HTTPS・DDoS対策・基本的なWAFがすべて含まれ、月間のアクセス数がどれだけ増えても課金されません。第8章のWordPressの接続で扱った構成は、Freeプランのまま運用できます。

自宅サーバー・NASの公開
Freeで完結します。Cloudflare TunnelAccessも、50ユーザーまで無料です。家族や少人数のチームで使う範囲なら、この枠を超えることはまずありません。

小規模なWebアプリ・API
多くの場合Freeで足ります。Workersの1日10万リクエストは、秒間に均すと約1.16リクエスト。個人サービスの初期であれば十分な余裕があります。

AIを使った試作
Freeで始められます。Workers AIの1日10,000 Neuronは、軽量なモデルなら1日数百回から数千回の呼び出しに相当します。試作の範囲であれば無料枠の中に収まります。

業務で使う基幹サイト
ここが分岐点です。技術的にはFreeで動きますが、稼働率の保証やサポートを契約として必要とするかどうかで判断が変わります。詳しくは後述します。

Proプランに上げるべきとき(月20〜25ドル)

Proへの移行を検討すべき条件は、次のいずれかに当てはまるときです。

1. WAFのマネージドルールをフルで使いたい
Freeのマネージドルールは縮小版です。攻撃を受けている、あるいは受ける可能性が現実的にあるサイトでは、Pro以上のフルセットが実質的な要件になります。第2章のWAFとは?で扱った内容です。

2. WAFカスタムルールが5個で足りない
Proで20個に増えます。国別のブロック、パスごとの制限、特定のUser-Agentの遮断――といったルールを積み上げていくと、5個はすぐに埋まります。

3. 画像の最適化(Polish)を使いたい
写真の多いサイトでは、表示速度への効果がはっきり出ます。

4. WordPressのHTMLをキャッシュしたい(APO)
APOはFreeプランでも月5ドルのアドオンとして使えます。ただしPro以上なら追加費用なしで含まれるため、「APOだけのために月5ドル払う」状況なら、あと15ドルでProにする方が得です。これは実際によくある判断です。

5. 詳細なアナリティクスが必要
Freeでも基本的な数字は見られますが、期間や粒度が限られます。

逆に言えば、上のどれにも当てはまらないならProにする理由はありません。「有料にすれば速くなるのでは」という理由でのアップグレードは、多くの場合期待外れに終わります。CDNの配信速度そのものはFreeでも同じネットワークを使っています。

Businessプランに上げるべきとき(月200〜250ドル)

Businessは、機能というより契約要件で選ぶプランです。

  • 100%稼働率のSLA(返金補償つき)が必要:社内の稟議や顧客との契約で、稼働保証が求められる場合
  • 応答保証つきのサポートが必要:障害時に「いつまでに返答が来るか」が決まっている必要がある場合
  • PCI DSS準拠やカスタム証明書の持ち込みが必要:決済を扱うサイトなど
  • アップロード上限200MBが必要:Free/Proは100MB
  • WAFカスタムルールが100個必要

月200ドルは個人には大きな金額ですが、サイトが止まると事業が止まる規模になれば、保険としての合理性が出てきます。判断の軸は「機能が欲しいか」ではなく「止まったときに誰にどう説明するか」です。

Workers有料プランに上げるべきとき(月5ドル〜)

ゾーンプランとはまったく別の判断です。次のときに検討します。

  • 1日10万リクエストを超える:Freeでは超過分が実行されず、エラーになります
  • CPU 10ミリ秒の制限に引っかかる:重い処理を行うWorkerでは制限に達します。有料プランでは既定30秒まで
  • Durable ObjectsHyperdriveを本格的に使う
  • Workers AIを1日10,000 Neuron以上使う

月5ドルには1,000万リクエストとCPU 3,000万ミリ秒が含まれます。個人開発の範囲では、有料プランに移行しても月5ドルのまま推移することがほとんどです。 「従量課金=青天井で怖い」と身構える必要はありません。

判断のしかた

プランを上げるかどうかの判断
図2:プランを上げるかどうかの判断

順番に自問すると整理できます。

  1. 何に困っているのか? 速度か、防御か、上限か、契約要件か
  2. それはどの勘定の話か? ゾーンプラン/Zero Trust/開発者向けのどれか
  3. 本当にプランの問題か? 設定で直る問題ではないか(後述)
  4. そのドメインだけ上げれば済むか? プランはゾーン単位。全ドメインを上げる必要はない

特に3番が重要です。プランを上げても解決しない典型例を挙げます。

  • サイトが遅い:多くの場合、原因はオリジンサーバーかキャッシュ設定です。Cache Rulesの見直し(Freeで10個まで)が先です
  • HTTPで通信したい:SSH・RDPなどHTTP以外のプロトコルは、プランではなくSpectrumの領域です
  • タイムアウトする:Error 524は既定125秒で、延長はEnterpriseのみ。Proにしても変わりません
  • ボットを止めたい:段階が3つに分かれています。FreeはBot Fight Mode、Pro/BusinessはSuper Bot Fight Mode、スコアを使った本格的なBot ManagementはEnterprise相当です。まずFreeの範囲で足りるかを確認してください

費用が膨らむパターンと予防

無料枠が広いぶん、課金されるのは想定外の使い方をしたときです。実際に起きやすいものを挙げます。

AI機能を公開して大量に呼ばれる
最も現実的なリスクです。第8章でも触れたとおり、AI Gatewayで支出上限とレート制限を設定してください。

KVの書き込み回数
無料枠は1日1,000回しかありません。アクセスのたびに書き込む設計(アクセスカウンターなど)にすると、すぐ超えます。第6章のKVとは?で扱った「読み取り中心」の原則を守ることが、そのままコスト対策になります。

D1の読み取り行数
D1の課金は「読んだ行数」です。インデックスのないテーブルを全件走査するクエリは、行数を一気に消費します。 遅いだけでなく高くつく、という点で通常のデータベースと感覚が違います。

R2のClass A操作
保存よりも操作回数が効くことがあります。小さなファイルを大量に書き込む処理では注意が必要です。

複数ドメインの有料化
プランはゾーン単位です。5つのドメインをProにすれば月100〜125ドルになります。有料機能が本当に必要なドメインだけを上げるのが基本です。

予防策として、有料プランを使う場合はダッシュボードの Notifications で使用量の通知を設定しておくことをおすすめします。気づいたときには膨らんでいた、という事態を避けられます。

初心者が注意するポイント

  • まずFreeで始める:Cloudflareはアップグレードを迫ってきません。困ってから上げれば十分です
  • 困りごとを「勘定」に分類する癖をつける:ゾーンか、Zero Trustか、開発者向けか。ここを間違えると、上げても解決しません
  • 年払いで20%安くなる:ProとBusinessは年払いにすると月あたり2割引きです。継続が決まっているサイトなら検討する価値があります
  • 請求は米ドル建て:為替で円換算額が変わります
  • 無料枠の単位(日/月)を確認する:Workersとその周辺は「1日」単位、R2は「1か月」単位です。日単位の枠は、試験中に一気に使い切ることがあります
  • ダウングレードもできる:一時的にProにして試し、不要なら戻す判断も可能です
  • ベータ機能は無料でも仕様変更がある:AI Searchのように、無料であることが将来も続く保証はありません

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まとめ

  • Cloudflareの課金は「ゾーンプラン」「Zero Trust」「開発者向け従量課金」の3つの別勘定。困りごとがどれに属するかをまず特定する
  • 転送量・DDoS対策・認証回数といった「増えると怖い」項目は無料で無制限
  • 個人ブログ、自宅サーバーの公開、小規模なWebアプリ、AIの試作――いずれもFreeで完結することが多い
  • Proはマネージドルールのフルセット・カスタムルール20個・画像最適化・APOが目的なら。速度目的では効果が薄い
  • Businessは機能ではなくSLA・サポート・監査要件で選ぶ
  • Workers有料プラン(月5ドル)はゾーンプランとは別勘定。個人開発では月5ドルのまま推移することが多い
  • 費用が膨らむのはAI機能の公開・KVの書き込み・D1の全件走査・複数ドメインの有料化。通知設定で予防する
  • プランを上げても解決しない問題(速度・タイムアウト・非HTTPプロトコル)があることを知っておく

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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。

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