コンテキストを設計する

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10秒でいうと

資料を渡すほど賢くなる、わけではありません。
要らないものを載せないことが、載せることと同じくらい効きます。

エージェントに任せる作業が長くなると、途中から様子がおかしくなります。最初の指示を守らなくなる、決めたはずの書式が崩れる、同じ確認を繰り返す。

原因はたいてい作業机の混雑です(No.04)。ここでは、机の上を設計する話をします。

詰め込まない

いちばん多い誤解から。関係する資料を全部渡せば精度が上がる、というのは違います。

5社の見積書をまとめる仕事に、過去3年分の取引履歴を全部渡したとします。関係はあります。でも、いま必要な5枚が、その中に埋もれます。

判断の目安は、この資料はいまの1手のために要るか、です。あとで要るかもしれない資料は、あとで渡せば足ります。

会話の外に置く

長く使うものは、会話の中ではなく外に置きます。置き場所は、No.05とNo.14で見たとおりです。

置き場所 向くもの
会話の中 いまの1手に必要な資料
プロジェクト その仕事のあいだ変わらない決めごと
メモリ 自分についての事実
ファイル 長く残す指示、手順、用語集

いちばん下のファイルが、第3章で新しく出てくる選択肢です。エージェントはファイルを読めるので、決めごとをファイルに書いておけば、必要なときに自分で読みに行けます。

これには、会話に貼るのとは違う利点があります。

  • 中身を自分で読み返せる(何を渡したか、あとで確認できる)
  • 履歴が残る(いつ何を変えたか分かる)
  • 人にも渡せる(同じ仕事を別の人がやれる)

この方式を突き詰めたものが、Claude CodeのCLAUDE.mdです。No.25とNo.38で扱います。

要約して引き継ぐ

作業が長くなったら、区切って引き継ぎます。No.06でチャットについて書いたことが、エージェントではさらに効きます。

引き継ぎで残すのは3つです。

  • 決まったこと(もう議論しない)
  • まだ決まっていないこと(次に片付ける)
  • 守ってほしい形式(具体的に)

逆に、捨てるものを意識するほうが大事です。試して駄目だった案、途中の計算過程、読んだけれど関係なかったファイルの中身。これらを引き継ぐと、机が新しくなった意味がありません。

作業を切り出す

No.23のサブエージェントは、この章の考え方の実装です。

大量の出力が出る作業——ログを読む、テストを走らせる、大量のファイルを検索する——は、別の机でやらせて、結果だけ受け取る。本体の机は、判断のために使います。

見積書の仕事なら、こう分けます。

  • 本体:どういう表にするかを決め、できた表を見る
  • 切り出す:5社のPDFを読んで項目を抜き出す(出力が多い)
  • 切り出す:できた表を検算する(先入観を入れたくない)

見分けるサイン

机が混んできたときのサインです。

  • 同じ指示を2回以上言い直している
  • 最初に決めた書式が崩れてきた
  • 「さっきの件ですが」が通じにくくなった
  • 返事が長くなり、要点がぼやけてきた

1つでも出たら、区切り時です。粘るより、引き継いで新しく始めるほうが速い。

やってみよう:いまの会話を棚卸しする(3分)

長くなってきた会話で試してください。

プロンプト
この会話で、いまも判断に効いている情報と、もう不要な情報を
分けてください。不要なものについては、なぜ不要になったかも
一言添えてください。

期待される結果:2つに分かれて返る。「試したが採用しなかった案」「途中の計算」が不要側に並ぶ。

うまくいかないとき:全部「効いている」と返ってきたら、まだ区切り時ではないということです。それが分かるだけでも収穫です。

つまずきポイント

広いモデルなら詰め込んでよいと思ってしまう。広さと精度は別です(No.04)。100万トークン渡せることと、100万トークンぶんを同じ精度で扱えることは違います。

引き継ぎの要約を長く作る。20行を超えたら、それ自体が机を圧迫します。捨てる勇気のほうが要ります。

外部化しすぎる。何でもファイルに書くと、今度はどのファイルに何があるか分からなくなります。毎回読ませるものだけをファイルにしてください。

まとめ

  • 要らないものを載せないことが、載せることと同じくらい効く
  • 長く使うものは会話の外へ。ファイルなら読み返せて履歴も残る
  • 引き継ぎは残す3つより、捨てるものを決めるほうが大事
  • 出力が多い作業と、先入観を入れたくない作業は切り出す

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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。

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