10秒でいうと
間違えているときほど、文章は自然です。自然さと正しさは別々に決まるからです。
だから、読んで気づこうとせず、確かめる手順を持ってください。
第1章No.02の回収です。あそこで書いた性質が、実際にどう表れて、どう対処するかを扱います。
なぜ間違えるのか
No.02で書いたとおり、Claudeは次に来る言葉を予測しています。選んでいるのは正しい言葉ではなく、ありそうな言葉です。
ほとんどの場合、ありそうな言葉は正しい言葉と一致します。一致しない場面が問題です。
ここから、実務で最も重要な性質が出てきます。
文章の自然さと、内容の正しさは、別々に決まります。
自然な文章を作るのは得意なので、中身が間違っていても文章は自然なままです。だから、読んで見抜くのは難しい。
危ないのは決まった場所

条文・判例・統計の数値・人名・書名・URL。
共通しているのは、形式が決まっていて、それらしく作りやすいことです。条文らしい番号、論文らしい書名、それらしいURL。全部、形だけなら作れます。
そして間違いに気づきにくい。知らないから聞いているので、返ってきた答えが正しいか判断できません。
存在しない条文の話
このガイドで繰り返し出てきた例です。
「この件について、法律ではどう定められていますか」と聞くと、条文番号つきの答えが返ってくることがあります。条文らしい文体で、条文らしい番号で。
実在するとは限りません。
だから第8章No.62と第9章No.71では、条文番号や法令名を挙げないでください、原文を引用してくださいという頼み方を型にしました。
要約された条文は確かめられません。原文の引用なら確かめられます。
この形は、他の分野にも応用できます。出典を要約させるのではなく、原文を出させる
確かめる4手
1. 疑う。自然な文章ほど疑ってください。逆です。
2. 出典を求める。「参照したページのURLを示してください」。出典が付かなければ、記憶から答えています(No.18)。
3. 自分で開く。ここを飛ばす人が多い。踏まないなら、出典を出させる意味は半分です。
4. 突き合わせる。開いたページに、実際にそう書いてあるか。検索結果を要約する過程でも、内容はずれます。
4手のうち、3番目が最もよく飛ばされて、最も効きます。
指摘しても直らない
もう1つ、知っておくべき性質があります。
それは違います、と言うと訂正します。ただし、合っていたことまで訂正することがあります。
理由は、正しい指摘と誘導の区別がつかないからです。No.02で書いたとおり、Claudeは会話の流れとして「ありそうな応答」を返します。指摘されたら訂正するのが、ありそうな応答です。
だから、事実の確認をClaudeに聞き返さないでください。一次情報で確かめてください。
任せてよい仕事の線引き
ここまでの章で繰り返してきたことを、まとめます。
任せてよい。
- こちらが渡した資料の中で完結する仕事(要約、整理、抜き出し、比較)
- 確かめられる仕事(コードが動くか、計算が合うか、件数が一致するか)
- 考えを整理する仕事(論点出し、反論、質問づくり)
任せてはいけない。
- 記憶から事実を出させる仕事(数値、固有名詞、制度)
- 間違いに気づけない分野の仕事
- 元に戻せない操作(第3章No.19)
- 最終的な判断
線は「確かめられるか」で引けます。
目視で数えさせない、も同じ話
第8章No.59で書いた「計算はコードで」も、実は同じ原理です。
目で数えた結果は確かめられませんが、コードは読めます。コードが間違っていても、それは読んで直せる間違いです。
確かめられる形に変換する。これがこのページの結論です。
- 事実 → 出典を出させて、自分で開く
- 計算 → コードで実行させる
- 条文 → 原文を引用させる
- 件数 → 入力と突き合わせる
やってみよう:出典を踏んで、突き合わせる(5分)
自分の詳しい分野で試すと、効果がはっきり分かります。
プロンプト
“`
「(自分の詳しい分野の、少し細かい事実)」について教えてください。・調べたうえで答えてください
・参照したページのURLを必ず示してください
・確信が持てない部分があれば、そう明記してください
“`返ってきたら、URLを実際に開いて、書いてある内容と突き合わせてください。
期待される結果:たいてい合っています。ただし、細部がずれていることがあります。
うまくいかないとき:完全に一致していたなら、それも収穫です。大事なのは、確かめる手順を1回通したことです。次からは、判断に使う情報だけこの手順を通せば済みます。
つまずきポイント
自然な文章を信じる。自然さと正しさは別です。
出典を開かない。ここを飛ばすと、手順の意味が半分になります。
Claudeに聞き返して確かめる。誘導に合わせて訂正されます。
知らない分野で使って、気づかない。確かめられる分野から慣れてください(第8章No.64)。
関連ページ
- No.02 大規模言語モデルの仕組み — なぜ間違えるのか
- No.18 Web検索とリサーチ — 記憶と検索の見分け方
- No.59 データ分析とレポート — 目視で数えさせない
- No.62 契約と法務の下ごしらえ — 条文を挙げさせない
まとめ
- 間違えているときほど文章は自然。読んで見抜こうとしない
- 危ないのは条文・判例・統計・人名・書名・URL
- 確かめる4手のうち、自分で開くが最も飛ばされて、最も効く
- 線引きは確かめられるかどうか。確かめられる形に変換する
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※本記事の情報は 2026年8月時点のものです。